私の年下メガネくん
 それにしても課長がほめるなんて珍しい。さらに自分にはできないと弱みをさらすなんて。
「仕事も的確で速いし、お前が主任でよかった」
 めったに聞けない言葉の連続だ。録音して何度でも再生したい。

「じゃあなんで私には厳しかったんですか?」
 思わず聞いていた。
「……お前はある意味で特別なんだ」
 むすっとして答える爽真に、なんだか胸が高鳴った。

 女性としてではなく、同士として見てもらえたような気がする。
 楓子にとって、仕事では爽真が一番の輝ける星だ。そんな彼に認められて、嬉しくないわけがない。

「これからも頼んだぞ」
「はい!」
 一緒に会議室を出ると、心配そうな顔の葵に気が付いた。席に戻ると同時にスマホにメッセージが届く。

『課長、なんだったんですか?』
『珍しく褒められたの。課長って、私と風屋くんには特に厳しいよね』

『鶴谷チルドレンだからですかね。期待されてるんだと思ってます』
 鶴谷チルドレンって、と返信しようとして、はっとした。私用でスマホを使い過ぎだ。

 笑っているキャラクターのスタンプを返して葵を見ると、微笑を返された。
 なんだか妙にドキドキしてしまう。悪いことなんてしてないのに。
 必死に抑えようとするときめきは、胸から魔法のようにこぼれて収まることを知らなかった。
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