私の年下メガネくん
「残業、大変ですね」
「ありがと」
 にこっと笑うと、すすっと彼が寄って来て、頭にぽん、と手を置かれた。

「本当にお疲れ様です」
 ぽかんとして顔を上げると、彼ははっとして手をどける。
「すみません、つい!」
 彼はあわあわと頭を下げる。
 その姿に、胸がきゅんと締め付けられた。背の高い彼がしゅんとしている姿が、なんともいえずかわいらしい。

「私なら大丈夫だよ。でもほかの人にやらないでほしい」
 言ってから、楓子ははっとする。
「な、なに言ってるんだろうね、私」
 あはは、と笑ってごまかすと、葵の甘えるようなまなざしとぶつかった。

「大丈夫なら、またしてもいいんですか?」
 どきっとして、思わず顔を伏せる。
「……いいよ」
 答えると、そっと彼の腕が伸びてきた。

 髪を優しく撫でられて、心臓が踊り出す。ブレイクダンスに出場させたら絶対に世界大会優勝だ。
 優しい手の感触はやがて、そっと頬へと伸びる。
「花蔵さん、顔をあげてください」
 導かれるように顔を上げると、甘やかな瞳に迎えられた。

「俺、あなたのためにかっこよくなりたいって思いました。少しはかっこよくなれましたか?」
 とろけるような声に、楓子はただ頷く。
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