私の年下メガネくん
 再び彼の唇が重なった。今度は遠慮などなかった。楓子の唇を乱暴に割って舌が侵入し、熱く熱く彼女を求める。
 頬に沿えられた手を握ると、もう片方の手で頭を抱き寄せられる。

 足りない気持ちは消えるどころか深くなり、もっともっと、と彼が欲しくなる。
 彼がようやく唇を離したとき、楓子はとろんとした目で彼を見つめた。

 彼は顔を真っ赤にして目をそむける。
「これ以上は我慢できなくなりそうです」
「……うん」
 楓子は頷く。ふたりとも、明日も仕事だ。だから……。

「駅まで送ります」
「……うん」

 離れがたく思いながら、そっと手を離す。
 だけど彼のぬくもりがずっと残っていて、胸には彼の甘いまなざしが焼き付いていた。
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