私の年下メガネくん
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翌日、二時五十五分。
楓子が仕事にきりを付けたとき、事務の女性が早足で歩いてくるのが見えた。
来客を告げられるのと思ったら、彼女は意外なことを口にした。
「小会議室1にCHIHAYAさん、小会議室2に一和の赤沢さんをお通ししました。アポに変更があったんですか?」
「そんなはずは……」
驚く楓子に、彼女は眉をひそめる。
「お茶をお出ししてきます。できることありますか?」
機転の利く質問に、楓子はしょっぱい顔をして頷く。
「赤沢さんには雑談して間を持たせてもらえると助かる」
「わかりました」
彼女は身をひるがえし、給湯室に向かった。
楓子はすぐさま課長の元に向かい、報告する。
「すみません、ミスです」
それだけで爽真は察した。席が近いから声が聞こえていたのだろう。
「ダブルブッキングか」
「はい。一和の赤沢さんとガラス工芸作家のCHIHAYAさんです」
赤沢はセクハラ発言が多く、人のミスをねちねちとあげつらう厄介な人物だ。
CHIHAYAは彼女の作品そのもののように繊細で、対応をあとまわしにされたとなったらショックで作品を作れなくなるかもしれない。
爽真はすぐさま社内アプリを立ち上げ、人員を確認する。一緒に覗き込むと、手があけられそうなのは、葵と晃司だった。