私の年下メガネくん

 連絡ミスはどうして起きたのか。赤沢に聞いてわかるだろうか。だが、一和からの印象が悪くなりそうだ。せっかく葵がカバーしてくれたのだから、それは避けたい。
『足をすくおうとする奴に隙を与えるな』
 爽真の声が蘇り、楓子はスマホを握りしめる。

『予定がわかったら連絡するね』
『了解です。元気出してください』
 がんばれ、のスタンプが続いて届いた。
 楓子は深いため息をついた。足元は真っ暗で、先は見通せそうになかった。



 それからはアポの確認に慎重になった。
 葵からの連絡にはあたりさわりなく返していた。
 メッセージを見るたびに恋の熱が冷めたことを認識せざるを得なかった。
 なんともいえない重苦しさが胸をしめる。どれだけ深呼吸をしても粘性のある黒い霧が肺にはりついて消えない。
 自分に気をつかって買っただけで、本当はあのメガネでは嫌だったのだろうか。

「お前、存在感出たよな~」
 晃司の軽い声に、楓子ははっとした。いつの間にか思考に沈んでいた。
「うるせーよ」
 葵が軽く笑いながら返す。
 砕けた口調が珍しくて顔を向けると、女子社員もいた。オフィスのそこだけ、妙に明るく見える。

「ほんと、変わったよねー」
「俺は変わったつもりないよ」
「前より雰囲気いいよ」
 砕けて話をする彼らに新鮮さを感じると同時に、ショックだった。
 彼はいつも自分には敬語だ。なついてくる感じがかわいかったが、それは彼を下に見ていたことにならないだろうか。彼もそれを察して敬語に?
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