私の年下メガネくん
 ……果たして、今でも彼を好きと言えるだろうか。
 一緒にいられることが嬉しかった。だが、彼はその長い足で、さっさと先に歩いて行って、遠くで輝く星になるのだろうか。
 こぼれるため息は深く濃く、重々しく床に落ちて行った。

***

 爽真は楓子を見て目を細めた。
 あのミス以来、彼女の様子がおかしい。
 生き生きと仕事をする姿に、爽真は負けじと奮い立っていた。厳しくしてもくらいついてくるガッツを認めていた。
 葵と付き合い出してからは花開いたかのように美しくなり、まぶしかった。

 が、ここ最近は枯れたように萎れ、心を亡くしたように仕事をしている。おしゃれも封印したのか、以前と同じく白シャツに黒いスカートばかりだ。
 ひと段落したのを見計らい、彼女宛てに社内チャットを飛ばした。
『小会議室1へ来い』
『了解しました』
 楓子に続き、爽真は立ち上がる。

 会議室で向かい合って座り、どう切り出したものかと悩む。
「すみません。今日はなんでしょう」
 先に口を開いたのは楓子だった。打ちひしがれた様子が痛々しい。
「元気がなさそうだったから」
 その言葉に、はじかれたように楓子が顔をあげた。が、爽真はいつもの能面を返した。
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