私の年下メガネくん
「お前くらいだ、俺を動揺させるのは」
「すみません」
「責めてはいない。認めている、ということだ」
「課長が? 私を?」
 驚く楓子に爽真が苦笑を漏らすと、楓子はさらに目を丸くした。

「なにをそんなに驚く?」
「だって、課長が笑ってて」
「お前な、俺を何だと思ってるんだ」
「課長だと思ってます」
 真面目な顔で答えられ、爽真は思わずくくっと笑った。

「……課長、ね」
 笑う彼に、楓子は口をへの字に曲げた。
 その様子に爽真は安堵する。なにも聞けなかったが、彼女の平常心が戻ってきたようだ。

「もう大丈夫そうだな」
「ありがとうございます」
 楓子が頭を下げると、爽真は目を細めた。頭をなでてやりたい衝動にかられるが、すんでのところでこらえた。

「仕事に戻るか。なにかあったら言えよ」
「はい」
 爽真が先に立ってドアを開け、楓子を通そうとしたときだった。

「あ!」
 つまずいた楓子が転げかけ、爽真はとっさに抱き留めた。その体はやわらかく華奢だった。髪からはほのかな甘い香りがして、体の芯が熱くなる。
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