私の年下メガネくん
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変なところを見られちゃった。
楓子は動揺して仕事が手に付かなかった。
爽真から社内チャットが飛んできて、画面の端に表示される。
『やましいことはなにもしていない。堂々としていろ』
楓子はじとっとその文字列を眺める。
『了解しました』
返事をして、仕事にとりかかる。が、集中できないままに時間は過ぎていく。
「今日も残業か」
顔を上げると、缶コーヒーを持った爽真が立っていた。すでにフロアには自分と彼のふたりきりだ。
「ありがとうございます」
差し出された缶コーヒーを受け取ると、温かさに両手がほんわりと温まる。
自分の分を開封し、彼はぐびっとコーヒーを飲んだ。
「愛されてるな」
言われて、楓子は缶を落としそうになった。未開封で良かった、とほっとする。
「そうでしょうか」
「でなければ風屋があんな暴挙にでないだろう」
楓子は黙ってうつむく。
だったらどうして彼は自分から仕事を奪ったんだろう。
「誤解されたと思っているのか?」
「誤解っていうか」
課長は昼間のことを言っているようだが、楓子の頭には別のことがある。どう説明したらいいのか、言葉をうまくつかまえられない。
「誤解です、とも言えない仲なのか? そんなに信頼がないのか?」
ぐさぐさと刺され、楓子はさらにうつむいた。
恋をして、つきあって。だけどまだ信頼を築けていなかったように思う。