私の年下メガネくん

***

 変なところを見られちゃった。
 楓子は動揺して仕事が手に付かなかった。
 爽真から社内チャットが飛んできて、画面の端に表示される。
『やましいことはなにもしていない。堂々としていろ』
 楓子はじとっとその文字列を眺める。

『了解しました』
 返事をして、仕事にとりかかる。が、集中できないままに時間は過ぎていく。
「今日も残業か」
 顔を上げると、缶コーヒーを持った爽真が立っていた。すでにフロアには自分と彼のふたりきりだ。

「ありがとうございます」
 差し出された缶コーヒーを受け取ると、温かさに両手がほんわりと温まる。
 自分の分を開封し、彼はぐびっとコーヒーを飲んだ。
「愛されてるな」
 言われて、楓子は缶を落としそうになった。未開封で良かった、とほっとする。

「そうでしょうか」
「でなければ風屋があんな暴挙にでないだろう」
 楓子は黙ってうつむく。
 だったらどうして彼は自分から仕事を奪ったんだろう。

「誤解されたと思っているのか?」
「誤解っていうか」
 課長は昼間のことを言っているようだが、楓子の頭には別のことがある。どう説明したらいいのか、言葉をうまくつかまえられない。

「誤解です、とも言えない仲なのか? そんなに信頼がないのか?」
 ぐさぐさと刺され、楓子はさらにうつむいた。
 恋をして、つきあって。だけどまだ信頼を築けていなかったように思う。
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