私の年下メガネくん
「あれで壊れるならその程度だろ」
 笑うように言われ、楓子は爽真をにらんだ。
「本当にその程度だったらどうしてくれるんですか!」

「だったら俺にしろ」
 返って来た言葉に、楓子はきょとんとした。

「俺ならなにがあってもお前を信じる」
 見つめる瞳は真剣で、映るのは楓子の姿のみ。

 楓子は目をぱちぱちさせた。
 まるで口説かれているみたいだ。葵に恋人宣言をされたばかりなのに。
 そうして、はっと気づく。

「私を試さないでください。風屋くんとつきあってるんです」
 答えると、爽真がふっと笑った。
「それを聞いて安心した」
 ぽんと頭に手を置かれて、楓子はまた驚いて彼を見る。

「すまない、これはセクハラになるか」
 爽真は慌てて手をひっこめ、戸惑いを浮かべている。無意識にやってしまったようだ。
「大丈夫です。でも、もうしないでください」
「当然だ」
 答える爽真の顔は能面に戻っていて、だから楓子はほっとした。いつもの課長だ。

 葵に頭をなでられたときを思い出して胸がしめつけられる。課長のおかげで再確認できた。自分に触れていいのは葵だけ。ほかの誰でもない。
 刹那、全身が熱くなった。閉じ込められていた恋心が解放されて体に満ちたかのようだ。
 楓子はすくっと立ち上がる。
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