私の年下メガネくん
 翌日、楓子は顔色の悪さを化粧で隠した。メイクでカバーする気力があるのは元気になってきた証拠。そう自分を励まし、オフィスに入る。
 と、席でぎらぎらネイルを磨く夢華が目に付いた。服装こそオフィスカジュアルに戻ったが、髪色が明るくなって派手だ。
 いつも通りに朝礼が行われたあと、爽真が言う。

「花蔵、風屋、土肥、小会議室1に来てくれ。手ぶらでいい」
 不安に目を泳がせると、なぜか勝ち誇った顔の夢華が見えた。
「あんた、首きられるのよ」
 通りすがりにぼそっと言われ、楓子はぎゅっと拳を握りしめる。

 全員で小会議室に入る。
 テーブルの短辺に爽真が議長のように座り、メモ用のノートと、ノートパソコンを開いている。その片側に楓子と葵、反対側に夢華が座った。

「今日は先日起きたダブルブッキングの件で集まってもらった」
 爽真の硬質な声に、楓子は体を固くした。
「風屋の調べで、単純な連絡ミスではないことがわかった」
 続いた言葉に葵を見ると、彼は鋭い目を夢華に向けた。

「土肥さん。あなたが伝言をにぎりつぶしましたね」
「ひどーい。そんなことしてませーん!」
 夢華は両手で拳を作って口の前に当てる。

「赤沢さんに確認しました。電話に出た女性は語尾を伸ばす特徴的な喋り方をしていたそうです。合致するのはあなただけです」
 葵が怒りをこめると、夢華は、ふん、と鼻を鳴らした。
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