私の年下メガネくん
「土肥が花蔵の足をすくおうと狙っていたことならわかる」
 爽真ににらまれ、夢華がたじろぐ。
「葵くん、助けてよ。本当は私のこと好きなんでしょ!」
「ありえない」
 葵は顔をひきつらせ、怒りを込めて唸る。

「課長は私のこと好きよね? こいつらやっつけて!」
「あほか」
 爽真のありえない一言に、楓子はまた驚く。

「仕事をしないだけならまだしも、社の信用を失墜させる行為は見逃せない。派遣元に厳重に抗議する」
 爽真のこれはつまり、派遣を切る宣言に等しい。
「だったら柿田くんと結婚しちゃうんだからね!」
「柿田からは今朝、入籍の報告をもらった。土肥への嫌味を誉め言葉と取られたと愚痴っていたぞ」
 爽真が刺したとどめに、夢華が怒りを爆発させる。

「もういい、辞める! これは退職金にもらうから!」

 夢華はノートパソコンをひったくって身をひるがえし、最後の仕返しと言わんばかりにドアをばん! と叩きつけて出ていく。
「土肥さん!」
 追おうと立ち上がった楓子の手を掴み、葵も立ち上がる。

「大丈夫。あれは廃棄予定で、あのメール以外はなにも入ってませんから」
「だけど……」
「壊されることも想定していた。こちらで対処するから気にするな」
 爽真の言葉に楓子はようやく肩から力を抜き、それで葵も手を離してくれた。
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