私の年下メガネくん
「なにが怖いって、あれで四十過ぎてるんだよな」
 ぼそっと爽真がこぼす。
 楓子は閉められた扉を見た。人は年齢を重ねれば落ち着くものだと思っていたが、世の中にはいろんな人がいる。

「土肥が花蔵を目の敵にしていたのは嫉妬だろうな」
「社内で一番輝いていますからね」
 葵の誉め言葉に、楓子は照れてうつむき、それから慌てて爽真に頭を下げる。

「真相の解明、ありがとうございます」
「礼は風屋に言え」
 楓子は首をかしげて葵を見た。

「赤沢さんにメールがビジネス的じゃないって文句を言われて、反省のために見せてくださいって頼んで出て来たのがあれでした。で、昨日、課長と一緒に調べたんです。夜中までかかったので、電話に出れなくてすみませんでした」
 謝る葵に、楓子ははっとする。

「もしかして、調べるために担当を変えたんですか?」
「知らなかったのか。風屋はお前がセクハラを受けているからと担当替えを希望していた。タイミングのせいで自信をなくさせて悪かった。お前たちがその話をしていないとは思わなかった」
 楓子はしゅんと肩を縮める。葵を避けていたのは自分だ。

「ごめんね。変更は葵くんが担当を欲しかったからかなって疑っちゃった。ほかの人と仲良くしてるのもショックっていうか、嫉妬しちゃって」
「花蔵さん、かわいいです」
 くすっと笑う葵の頭を、立ち上がった爽真がノートでぺしっと叩く。
「保護者の前でいちゃつくな」
 楓子はいぶかしげに爽真を見る。
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