私の年下メガネくん
「俺がお前らを育てたんだ。保護者みたいなもんだ」
「課長がお父さん!?」
 葵がわざとらしく驚いて見せると、
「兄だろ」
 爽真はノートでまたぺしっと葵の頭をはたく。

「俺は先に出るから、風屋はこいつにキスでもして安心させてやれ」
「セクハラですよ」
 葵が眉を寄せてつっこむ。
「今日くらい許せ」
 爽真は、ははっと笑ってから表情を引き締める。

「風屋。頼んだぞ、彼女は俺の大事な……」
 言葉を切って、爽真は楓子を見る。

 小首をかしげる楓子に、爽真はふっと笑みをこぼした。
「大事な部下なんだ。泣かせるなよ」

「当然です。……と言いたいところですが、無理です。たくさん嬉し泣きさせる予定なので」
 答える葵に、楓子は顔を真っ赤にしてうつむく。その耳に吐息のように笑う爽真の声が聞こえた。

「ふたりで『打ち合わせ』してから戻ってこい。仕事はきっちりやれよ」
 ノートを持った手を挙げてから、爽真は会議室を出て行った。
 静かに閉まる扉を見守ったあと、楓子ははあっと息を吐く。

「課長、急にキャラ変わった……」
「俺の前だとわりとあんなでしたよ」
 楓子は驚きで目をまばたいた。
< 53 / 56 >

この作品をシェア

pagetop