私の年下メガネくん
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一週間後。
新たに雇われた事務の女性は、てきぱきと仕事をこなして順調に信頼を勝ち取っていた。
電話が鳴り、彼女はすばやく取る。告げられた内容に首をかしげ、保留ボタンを押した。そっと課長の席に近付き、小声で告げる。
「自称元カノから電話です」
普段は無表情な爽真の顔がひきつった。
彼はそのままスピーカーで電話をとる。
「鶴谷です」
『爽真さーん! 私ですぅ!』
直後、爽真が頭を抱える。こんな彼は珍しい、と彼女は目を丸くして立ち尽くす。
『私がいなくて困ってますよねぇ?』
「シゴデキの方が来ているので問題ない」
きっぱり言い切る爽真に、彼女は内心で喜んだ。いや、お世辞かもしれないのだけど。
「それより、前にも言ったがノートパソコンを返せ。返さない場合は警察に被害届を出す」
直後、電話がガチャ切りされた。
爽真は苦い顔を彼女に向けた。
「この人は前の派遣だ。いろいろと勘違いが多くて」
「ご苦労、お察しします」
彼女が言うと、爽真ははあっと深いため息をついた。
「あなたは聡明でとても助かっている」
「ありがとうございます!」
彼女はぺこりと頭を下げた。
ふと、彼の視線を追うとその先にきれいな女性——楓子がいるのを見つけた。風屋葵というイケメン男性と商品について語り合っている。 席に戻ろうと歩くと通りすがりに女性社員の声が聞こえて来た。
「あのふたり、悔しいけどお似合いだね」
「花蔵さんが仕入れたポーチはバカ売れ。仕事も恋も順調でうらやましい。私は課長派に戻る」
爽真に視線を戻すと、彼はなにごともなかったかのように仕事をしていた。