双子パパになった不屈の自衛官は飽くなき愛で純真ママを取り戻す


「震災が起こると、被災して大変な生活を送る裏で性犯罪が起きるという問題がある」


 流れていた沈黙を唐突に破ったのは砂羽さんのほうで、出された衝撃的な話題に地面から顔を上げる。


「被災して心の傷を負っている中で、追い打ちをかけるように心も体も傷付けられる。女性や子どもがそんな酷い目に遭う現実がある」


 昔、自分が子どもの頃に言われていたことが蘇る。

 避難所ではひとりで行動するな。トイレですらひとりで行かないように言われていたことを思い出した。

 砂羽さんは自衛隊員として、これまでの災害支援で多くの問題を目の当たりにしてきたのかもしれない。


「ボランティアは、いつまで」

「今週末いっぱいで、東京のほうに戻ります」


 答えると、砂羽さんは「東京から」と薄い唇に笑みを乗せる。


「今日のようなことが起こらないように、できれば、夜間の独り歩きは控えてください。誰かと一緒が絶対的に安全だから」


 真面目な声を受け「はい、わかりました」としっかり返事をする。

 そんな話をしているうち、宿泊しているビジネスホテルが見えてくる。

 私が「そこです」と指さすと、エントランス前まで一緒に歩いてくれた。


「送っていただき、ありがとうございました」


 対面し、頭を下げてお礼を口にする。


「お気をつけて」


 砂羽さんはそれだけを言い、歩いてきた方向に踵を返した。


 その逞しい後ろ姿を見送りながら、ふと気づく。

『助けていただき』が正解だったな……。

 最後に伝えたお礼の言葉が間違っていたと、小さな後悔を抱いた。

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