双子パパになった不屈の自衛官は飽くなき愛で純真ママを取り戻す


 水没する足下を気にする様子もなく、見知らぬ親子を手助けしていた彼女の姿には、立場上自然と体が向かう状況だった。

 だから、その場で顔を見てあのときの彼女だと気づいたときは相当な驚愕だった。

 自分の状態も気にせず人助けをしてしまうのは、きっと彼女の性分なのだろうと心が動かされたのは記憶に新しい。

 東京で偶然にも顔を合わせたのは、きっとなにかの縁があるから。彼女と言葉を交わしながら、密かに再会を喜んでいた。

 でも、その先に繋げるアクションは起こせなかった。

 躊躇なく連絡先を訊く勇気はなく、となり駅までの送りはあっという間の時間で……。

『気を付けて』と見送る瞬間まで、切り出そうかと悩む自分は確かに存在していた。

 地下鉄の階段を下りていく姿が見えなくなると、そこに後悔だけを残してハンドルを握り直した。

 さすがに三度目はない。そう思ったからこその悔い。

 紙袋の中にお茶の箱を戻し、木佐貫から手渡された連絡先のメモも大切に仕舞った。

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