組長さんと年下彼女~今日から同棲始めます~
(あれ? ひょっとして〝静月さん〟は長谷川社長のいい人?)
その雰囲気にそんなことを考えて、芽生は思わず口元を綻ばせた。もしそうだとしたら、京介がいくらその人を〝姫〟と称しても、ちっとも心がざわつかない。
「あの……静月さんって、長谷川社長の……」
「ああ、自慢の伴侶だよ?」
それを確認したくて問いかけようとしたら、やや食い気味に長谷川社長から配偶者宣言をされてしまう。
「キャー、素敵です! 私もいつか好きな人からそんな風にスパッと連れ合いだって断言されたいです!」
京介をチラチラ見つめながら言ったら、長谷川社長が「もしかして神田さんは相良のこと……」と言いかけてから、ハッとしたように口をつぐんだ。
「バカなことを言うなよ、長谷川。見ての通り、こいつぁー俺の娘みてぇなもんだ。子ヤギだって俺のことは保護者としか思ってねぇわ。――な?」
有無を言わせぬ京介の物言いに、芽生はグッと言葉に詰まった。
いつもそうだ。
芽生が他者に対して京介への好意をあからさまにしようとすると、こんな風に予防線を張られてしまう。それが芽生には悲しくてたまらないのだけれど、そのことを深く追究すれば、今のような関係も壊されてしまう気がして……芽生は一線引かれる度に気持ちを飲み込んで誤魔化す癖が付いてしまった。
でも、さすがに『そうだね』と京介の言葉を肯定することは出来なくて曖昧に微笑んだら、長谷川社長が何か言いたげに芽生と京介を見詰めてくる。
その視線にわざと気付かないふりをして目線を落としたと同時、背後の扉が静かに開いて、「あの、将継さん。お茶……よく分からなくて……」と、芽生より二〇センチ以上は背が高いと思える男性が姿を現した。
黒髪に、泣いているわけではないのに何となくうるうると潤んで見える黒瞳。
一目見るなり余りの美青年ぶりに、芽生は現状も忘れてつい彼の美貌に見惚れてしまった。
「お帰り、静月」
「おう、静月ちゃん、お帰りぃー」
すぐさま長谷川社長と京介からそんな声が聞えてきて、芽生は「えっ!?」と思わず声を上げていた。
だって……凄く綺麗だけど、どう見ても〝静月さん〟は《《男性にしか見えなかった》》からだ。
「あ、あのっ、静月さんって……男の……ひと?」
長谷川社長から伴侶と聞いていたからてっきり女性だと思っていたし、何より京介も彼のことを姫と呼んでいた。
「あ? なに当たり前のこと聞いてんだ、子ヤギ。静月ちゃんはどうみても男だろ」
さも当然のように京介に説明されて、芽生はますます混乱してしまう。
「でもさっき京ちゃんが〝姫〟って……。それに長谷川社長も……」
芽生も大いに戸惑っていたけれど、それは静月も同様だったらしい。
帰社するなり目の前に見知らぬ人間がいて驚いたんだろう。
芽生の横を物凄くぎこちない様子で通り抜けると、所在なげに長谷川社長を見上げた。
その雰囲気にそんなことを考えて、芽生は思わず口元を綻ばせた。もしそうだとしたら、京介がいくらその人を〝姫〟と称しても、ちっとも心がざわつかない。
「あの……静月さんって、長谷川社長の……」
「ああ、自慢の伴侶だよ?」
それを確認したくて問いかけようとしたら、やや食い気味に長谷川社長から配偶者宣言をされてしまう。
「キャー、素敵です! 私もいつか好きな人からそんな風にスパッと連れ合いだって断言されたいです!」
京介をチラチラ見つめながら言ったら、長谷川社長が「もしかして神田さんは相良のこと……」と言いかけてから、ハッとしたように口をつぐんだ。
「バカなことを言うなよ、長谷川。見ての通り、こいつぁー俺の娘みてぇなもんだ。子ヤギだって俺のことは保護者としか思ってねぇわ。――な?」
有無を言わせぬ京介の物言いに、芽生はグッと言葉に詰まった。
いつもそうだ。
芽生が他者に対して京介への好意をあからさまにしようとすると、こんな風に予防線を張られてしまう。それが芽生には悲しくてたまらないのだけれど、そのことを深く追究すれば、今のような関係も壊されてしまう気がして……芽生は一線引かれる度に気持ちを飲み込んで誤魔化す癖が付いてしまった。
でも、さすがに『そうだね』と京介の言葉を肯定することは出来なくて曖昧に微笑んだら、長谷川社長が何か言いたげに芽生と京介を見詰めてくる。
その視線にわざと気付かないふりをして目線を落としたと同時、背後の扉が静かに開いて、「あの、将継さん。お茶……よく分からなくて……」と、芽生より二〇センチ以上は背が高いと思える男性が姿を現した。
黒髪に、泣いているわけではないのに何となくうるうると潤んで見える黒瞳。
一目見るなり余りの美青年ぶりに、芽生は現状も忘れてつい彼の美貌に見惚れてしまった。
「お帰り、静月」
「おう、静月ちゃん、お帰りぃー」
すぐさま長谷川社長と京介からそんな声が聞えてきて、芽生は「えっ!?」と思わず声を上げていた。
だって……凄く綺麗だけど、どう見ても〝静月さん〟は《《男性にしか見えなかった》》からだ。
「あ、あのっ、静月さんって……男の……ひと?」
長谷川社長から伴侶と聞いていたからてっきり女性だと思っていたし、何より京介も彼のことを姫と呼んでいた。
「あ? なに当たり前のこと聞いてんだ、子ヤギ。静月ちゃんはどうみても男だろ」
さも当然のように京介に説明されて、芽生はますます混乱してしまう。
「でもさっき京ちゃんが〝姫〟って……。それに長谷川社長も……」
芽生も大いに戸惑っていたけれど、それは静月も同様だったらしい。
帰社するなり目の前に見知らぬ人間がいて驚いたんだろう。
芽生の横を物凄くぎこちない様子で通り抜けると、所在なげに長谷川社長を見上げた。