嘘と本音の距離

月蝕の檻(つづき)

セーザーの指がるなの口内から抜けると、今度は腰布を解く音が鈍く響いた。るなの視界はまだ涙でぼやけているが、肌に触れる夜風の冷たさで、自分がどのような状態にあるかは痛いほどわかる。

「……っ」

震える膝の内側に、セーザーの掌が滑り込む。分厚い手のひらが太ももを押し広げるたび、るなの喉から零れる吐息が熱を帯びていく。男言葉も、抵抗も、もう意味をなさない。

「あ...ぁ...ん……だめ...そんなに……覗き込まないで……んぅっ!」

指先が再び触れた瞬間、るなの背中が弓なりに反った。濡れた音と共に、秘めた部分が無理やり開かれていく。自分でも知らなかった感覚に、爪先がコンクリートを掻きむしる。

「ひゃぁ……! ...待ってぇっ! ...入りす...ぎィ……あん、あぁっ……っ!」

セーザーの呼吸が乱れる。るなの耳元で、低く濁った声が呟かれる。

「……嘘だ。お前はもっと欲しがっている」

腰を押し上げる力が強くなる。るなの頭の中を、白い閃光が走った。

「...あっ......くっ……! ...んぅっ...そんなぁ……んんっ!!!」

拒絶の言葉は、途切れ途切れの喘ぎに消される。セーザーの指の動きは容赦なく、るなの体はそれに応えるように震え続ける。腿の内側が熱く痙攣し、吐息がますます細くなる。

「あ……あぁん……だめ...もう……おかしくなぁ...る……っ」

るなが必死に唇を噛んでも、抑えきれない声が漏れる。セーザーの影がさらに深く覆い被さり、るなの視界から月光が消えた。

「……ほら。お前の本当の声」

耳朶に吹きかけられる言葉に、るなの最後の理性が砕け散る。

「いやっ……いやぁっ……! ...んあっ……っ!!」

叫びと共に、るなの体が跳ねた。爪先が床を擦り、無様に膝を折る。セーザーはその様子をじっと見下ろし、ようやく手を引いた。

崩れ落ちるるなの頬に、冷たい汗と涙が混じり合う。男装も誇りも、今はただの飾りに過ぎない。

「……おわ...り……?」

るなが朦朧とした意識で問うと、セーザーは静かに首を振った。彼の影が再び近づくのを感じて、るなは目を閉じた。

(……もう、何も考えたくない)

夜の闇が、彼女の最後の羞恥心も飲み込んでいく。
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