婚約破棄されたので辺境で新生活を満喫します。なぜか、元婚約者(王太子殿下)が追いかけてきたのですが?
「君のような若いイケメンくんが、どうしてわざわざこんな辺鄙な場所に? 王都の子でしょ?」
 アビーがそう思うのも無理はない。
 一年の三分の一が雪に覆われるような辺境の地に、好んでやってくるような人間とは、かなり物好きだろう。
「ギデオンの下で学ぶためだ。辺境は王都と環境が異なるからな」
 それはエステルもギデオンから聞いた話と一致する。
「ふ~ん」
 だが、アビーが納得したかどうかは別らしい。
「でも、君みたいな若い力持ちは歓迎するよ。よかったね、エステル。これで荷物運びが増えた」
 やはりアビーはセリオを利用するつもりだったのだ。
「セリオさん。嫌なときは嫌だってはっきり言ってくださいね。アビーさんは少し強引なところがありますから」
 エステルも席に戻って、お茶を一口飲んだ。
 初めて顔を合わせたセリオだというのに、こうやって一緒にお茶を飲むのは不快ではない。むしろどこか懐かしい気もする。
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