婚約破棄されたので辺境で新生活を満喫します。なぜか、元婚約者(王太子殿下)が追いかけてきたのですが?
「領主様、よくいらっしゃいました。ささ、お疲れでしょう。どうぞ、こちらに……」
 壮年の男性が愛想良く声をかけてきたが、その視線はギデオンを飛び越えエステルとセリオに向けられていた。
「区長、紹介しよう。こちらはエステルとセリオ。王都からの客人だ。我が領地を見せて回っている。ここは、魚の宝庫だからな。美味い魚料理をご馳走してやりたくてな」
 エステルはギデオンの言葉に合わせて頭を下げる。
 区長と呼ばれた男は、ハリウスと名乗った。
「それから、こちらのエステルは我が領の魔導職人だ。何か困ったことがあれば、彼女に相談してくれ」
 歩きながら、エステルがアドコック領に来てから、どのような魔導具を作ったかを、ギデオンが手振りを交えて説明していた。頷きながら話を聞いているハリウスだが、案内された家に着いたときには、すっかりとエステルに尊敬の眼差しを向けるようになっていた。
「ギデオン様は大げさなんですよ」
 客間に案内され、やっと一息ついたエステルは、照れ隠しもあってそう言っていた。
< 140 / 265 >

この作品をシェア

pagetop