婚約破棄されたので辺境で新生活を満喫します。なぜか、元婚約者(王太子殿下)が追いかけてきたのですが?
 エステルの突っ込みに、セリオが薄く笑う。
「もう。セリオさんは、そうやってすぐ誤魔化すんですから」
 エステルがぷりぷりと怒ってみせても、セリオはそれを軽くあしらう。そこでまた、懐かしい感覚に襲われた。
「あっ……」
 胸がズキリと痛む。
「エステル、どうかしたのか? やはり、馬での移動で無理がたたったのか?」
「いえ……なんでもありません」
 エステル自身も、どうしてそのような感情になるのか、理由がさっぱりわからない。
「顔色が悪い。本当は、君と一緒に買い物して帰ろうと思ったのだけれど、すぐに戻って休んだほうがいいな」
「セリオさんが、買い物したいならどうぞしていってください。私は一人で大丈夫ですから……」
 なぜかセリオにやさしくされると、胸の奥がズキズキと痛む。
「俺のことは気にするな。とにかく今日は真っすぐ帰ろう。もう一度、馬に乗るか?」
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