婚約破棄されたので辺境で新生活を満喫します。なぜか、元婚約者(王太子殿下)が追いかけてきたのですが?
 何よりも、第一に国のために働かなければならず、国の利益となるような魔導具を開発したり、売り上げの一部を税金として納めたりと負担も多い。さらに、年に数回、王都に足を運ぶ必要があり、職人はそれを嫌う。移動時間がもったいないと思っている者たちばかりだからだ。
 そのため、地方の職人は国家魔導技師を避ける傾向にあり、そんな彼らは技師ではなく職人であり続けようとする。
「その魔導職人も女性だしね。女性の技師や職人は少ないから、エステルにとってはいい師になるのではと思っているのだが……」
 父が言うように、女性で魔導具の開発や製作に携わっている者は数少ない。専門性に特化しているから何かと敬遠されているし、女性は社交を取り仕切るといった考えがまだ根深く残っているためか、手に職をつける女性のほうが珍しいのだ。
 モートンの言葉に、エステルは興味を示すものの、それでもまだ気持ちは沈んでいる。
「もちろん、エステルがここにいたいというのであれば、私たちは無理にとは言わないわ。お父様もあなたを思いやってのことよ?」
「お母様……」
 家族と離れるのは寂しいが、ここにいればセドリックを想ってしまうだろう。何よりもこの地は彼との思い出が多すぎる。
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