婚約破棄されたので辺境で新生活を満喫します。なぜか、元婚約者(王太子殿下)が追いかけてきたのですが?
「エステル。一つだけ気をつけてほしいことがある」
「はい?」
 急にセリオは何を言い出すのか。
「さっきも言ったが、君が考えた『でんわ』は、まだ領地の外に広めてはならない」
「どうしてですか?」
「ああ、だが……今はまだ……いや、とにかくここの領民以外には『でんわ』を広めないでほしい。時期がきたら、たくさん作れるようになるだろうから」
 セリオの曖昧な言い方に、エステルも首をかしげたくなるが、納得した振りだけしておいた。
 ギデオンに手紙を預けたエステルは、地下室へと戻る。
 そしていつもの席に座り、目の前には作りかけの『でんわ』があっても、エステルはぼーっとしたままだった。
「エステル、どうしたの?」
 さすがにアビーも、魔導具前にぼんやりとしているエステルが気になったようだ。だが、声をかけてもエステルの視線は宙に向いたまま。
< 178 / 265 >

この作品をシェア

pagetop