婚約破棄されたので辺境で新生活を満喫します。なぜか、元婚約者(王太子殿下)が追いかけてきたのですが?
「悩んでいることがあるなら、このアビー様に言ってみなさい」
 アビーが胸を張ってトンと叩く。アビーは頼れる姉のような母のような存在だ。彼女からそう言われたら、エステルの口からするすると言葉が出てくるから不思議だった。
「……セリオさんが、王都に戻るそうです」
「そうなの?」
 さほど興味はないとでも言いたげなアビーの口調に、安堵と苛立ちが混じる微妙な感情が湧き起こる。
「でも、王都から来た子だって言っていたものね。ずっとここにいるわけにはいかないでしょ? エステルだって、ここでの目的を果たしたら、向こうに戻るんでしょ?」
「あっ」
 アビーに指摘されるまで忘れていたが、エステルだってずっとここにいるわけではない。名目上は療養になっているから、エステルの心身が回復したらまたヘインズ侯爵家に戻るはず。
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