婚約破棄されたので辺境で新生活を満喫します。なぜか、元婚約者(王太子殿下)が追いかけてきたのですが?
「なんだよ。結局、俺は荷物運びの男か!」
 そう言ったセリオと目が合う。澄んだ空のような青い瞳は、神秘的だ。つい目を奪われてしまう。
「エステル……?」
 ほろ苦い気持ちと絡み合って、ぼんやりしてしまったかもしれない。
 名を呼ばれて、我に返る。
「あ、ごめんなさい。別れは笑顔で、再会を涙でってアビーさんに言われたのに……」
 泣かないようにしようと思っていた。それでもほんの数か月だったというのに、セリオと過ごした日々が、頭の中に次々と思い出される。
「エステルは泣き虫だな」
 セリオの長い指が、溢れそうになっていたエステルの涙をぬぐった。
「俺と別れのときに、そんな不細工な泣き顔でいいのか? 俺はエステルを思い出すたびに、不細工な泣き顔しか思い出せないかもしれない」
< 185 / 265 >

この作品をシェア

pagetop