婚約破棄されたので辺境で新生活を満喫します。なぜか、元婚約者(王太子殿下)が追いかけてきたのですが?
「ぶ……不細工って……」
 少しカチンとくる彼の言い方に、エステルも反論した。少しだけ目を吊り上げる。
「泣くくらいなら、怒ったほうがいい。エステルに涙は似合わないからな」
「も、もう……」
 あまりにも恥ずかしいことをさらっと言われ、今度はエステルの頬が熱くなる。
「大丈夫。また絶対に会える。それに、この『でんわ』もあるしな。俺の声が聞きたくなったら、いつでもこれを鳴らしてくれ」
「はい……」
「じゃ、またな」
 セリオが手を差し出してきたため、エステルもその手を握り返す。
 エステルは馬車に乗り込むセリオの姿を見送った。そしてその馬車が見えなくなるまで、その場に立ち尽くしていた。

 セリオがいなくなってから、まるで魂が抜けたかのようにぼんやりするエステルにアビーの叱責が飛ぶ。
「ちょっとエステル。何、ふぬけになっているの!」
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