【電子書籍化】婚約破棄されたので辺境で新生活を満喫します。なぜか、元婚約者(王太子殿下)が追いかけてきたのですが?
「えぇと……そうですね……」
 エステルは眉根を寄せ、記憶を手繰り寄せる。
 寝て目が覚めたらここにいた。となれば、寝る前に何をしていたのか。
「う~ん。あそこの魔導具室が荒らされていて。片づけをしたんですよね」
「それは覚えてる。そしてエステルが言ったんだよね? 初期型の『でんわ』の試作品がないって」
「そうです、そうです」
 エステルも記憶が繋がり、声を上げる。
 魔導具室が荒らされ、ギデオンに報告した。ギデオン立ち合いの下、散乱した部屋を片づけながら、なくなったものがないかを確認し、『でんわ』が二台、消えていたことを突きとめ、それをギデオンに報告した。
 その後は、いつもと同じように魔導具製作に取り掛かったはず――。
「アビーさん。荒らされた部屋の片づけをした後の記憶が、私にはありません」
 記憶はそこで途切れ、気がついたらこの冷たい部屋にいた。
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