婚約破棄されたので辺境で新生活を満喫します。なぜか、元婚約者(王太子殿下)が追いかけてきたのですが?
「だから、あの資料を……」
 エステルは男たちから渡された乱暴な設計書を思い出した。
「まさか、やつらは本当に?」
 セドリックが目を大きく見開き、驚きの声を上げた。
「えぇ……殺傷能力のある魔導具を作るようにと資料を渡されたのですが、まぁ、なんというかお粗末と言いますか、机上の空論というか。魔導具を知らない人が作った資料だというのがわかりました。それでアビーさんと、その資料を基に魔導具を作る振りをしながら、他の魔導具を作っていました」
「もしかして、それがさっき使った……」
 セドリックは小さく笑みを浮かべた。
「はい。防犯魔導具と呼んでいるんですけど。アビーさんが言うには、強制的に筋肉を痙攣させて、どうのこうのだそうです」
「アビーには、後で礼を言っておかねばならないな。なかなか癖の強い人間だとは思っていたが……むしろ、肝が据わっているというか……」
 その口調には、どこか親しみと尊敬が混じっていた。まるでセドリックがアビーを以前から知っているかのようだ。
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