婚約破棄されたので辺境で新生活を満喫します。なぜか、元婚約者(王太子殿下)が追いかけてきたのですが?
「ええと。ところでセドリック様は、セリオさんなのですか? 髪型も色も違うのでまったく気づかなかったのですが……」
 エステルは、セドリックをまじまじと見つめた。
 騎士団の後ろで見たのは確かにセリオだった。だが、誰かが彼を「セドリック」と呼び、今こうして目の前にセドリックがいる。
「騙していたわけじゃないんだ……エステルのことが心配だったから……」
セドリックは少し目を伏せ、髪を指で軽くかき上げた。
「魔石の力で髪色を変えただけだ」
「心配? 私とセドリック様の関係は、きっぱりすっぱり切れていますよね? 婚約も……解消したのですから……」
 言葉を口にするたび、エステルの胸がズキリと痛んだ。まるで古傷が疼くように、過去の記憶が蘇る。
「俺が悪いのはわかっている。だけどあのときは、そうでもしないと君を守れないと思ったから……セリオの姿で会いにいったのも、エステルを巻き込みたくなかったから……」
 セドリックは視線を逸らし、気まずそうに呟いた。部屋に重い空気が流れ、エステルの鼓動が耳に響くほど大きく感じられた。
「でも、セリオさんがセドリック様と聞いて、納得しました」
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