婚約破棄されたので辺境で新生活を満喫します。なぜか、元婚約者(王太子殿下)が追いかけてきたのですが?
「エステル……?」
 セドリックが顔を上げ、切なげな瞳でエステルを見つめる。
「私、アドコック領に行っても、セドリック様のことを忘れられなかったんです。あれだけひどいことをされたのに、やっぱり好きで。でも、そんなときセリオさんが来て、ちょっとだけセリオさんに気持ちが傾きました」
 エステルの声は震えながらも、素直な思いがあふれていた。
「セリオさんと一緒に馬に乗って、ペレの集落に行ったときは、セドリック様だったらよかったのにと思いました。でも、今考えれば、変な話ですよね。セリオさんもセドリック様も同じ人間だった……」
「悪かった……」
 セドリックは苦しげに呟いた。
「アドコック領に俺がいることを、他の人間に知られたくなかったんだ。ヴァサル国のこともあったから……」
「はい。でも今、セリオさんとセドリック様が同じ人間でよかったと思っています。浮気者だって思わないでくださいね。きっと私、あのときはセリオさんに惹かれていたんだと思います」
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