婚約破棄されたので辺境で新生活を満喫します。なぜか、元婚約者(王太子殿下)が追いかけてきたのですが?
そう言った彼の視線は、彼の隣に座る女子生徒に注がれる。
この部屋に入ったときから嫌な予感はしていた。婚約者であるセドリックの隣には、自分ではない別の女性が座っている。例えばそれが、図書室の閲覧席でたまたま隣に座ったというのであればわかる。しかしここは図書室ではないし、何よりも、席は他にもたくさん空いている。となれば、たまたま彼の隣に座ったわけではないだろう。
セドリックにもたれかかるようにして座っている彼女は、ジュリー・アンセント。隣国ヴァサル国からの留学生だ。銀色の髪は滑らかに肩を流れ、初夏を思わせる深緑の瞳はまるで宝石のよう。すらっとした身体つきは男女ともに魅了し、セドリックの隣に立つ彼女の肩の高さは彼と同じくらい。
生まれた国の違いもあるのかもしれないが、ジュリーはかなり背の高い女性だ。
「ジュリーはヴァサルからの留学生だ」
それはエステルだって理解している。
「知人もいないこの地で、一人勉学に励む者の気持ちが君にはわかるか?」
わかるかと言われても、心細いだろうという気持ちくらいしか想像できない。答えられずにいると、セドリックはわざとらしく息を吐いて肩を上下させる。
この部屋に入ったときから嫌な予感はしていた。婚約者であるセドリックの隣には、自分ではない別の女性が座っている。例えばそれが、図書室の閲覧席でたまたま隣に座ったというのであればわかる。しかしここは図書室ではないし、何よりも、席は他にもたくさん空いている。となれば、たまたま彼の隣に座ったわけではないだろう。
セドリックにもたれかかるようにして座っている彼女は、ジュリー・アンセント。隣国ヴァサル国からの留学生だ。銀色の髪は滑らかに肩を流れ、初夏を思わせる深緑の瞳はまるで宝石のよう。すらっとした身体つきは男女ともに魅了し、セドリックの隣に立つ彼女の肩の高さは彼と同じくらい。
生まれた国の違いもあるのかもしれないが、ジュリーはかなり背の高い女性だ。
「ジュリーはヴァサルからの留学生だ」
それはエステルだって理解している。
「知人もいないこの地で、一人勉学に励む者の気持ちが君にはわかるか?」
わかるかと言われても、心細いだろうという気持ちくらいしか想像できない。答えられずにいると、セドリックはわざとらしく息を吐いて肩を上下させる。