婚約破棄されたので辺境で新生活を満喫します。なぜか、元婚約者(王太子殿下)が追いかけてきたのですが?
「そんな彼女を無視し、孤立させようとしたのは誰だ?」
 誰だと問われても、誰かがわからない。
 エステルが菫色の瞳を揺らしつつセドリックを見つめれば、ジュリーは切なそうに目尻を下げる。
「エステル様はわたくしが話しかけても答えてくれず、いつも無視されるのです」
 かすれた声は、彼女の妖艶な容姿と相まって魅力を高めるもの。
「私が……無視……?」
 ジュリーに言われても、エステルには心当たりがなかった。
「この学園の女子生徒の中心にいるような君がジュリーを無視したとなれば、他の生徒もそれに同調するだろう」
 セドリックに言われても、エステルはジュリーを無視した記憶などない。
「心当たりはございません」
 濡れ衣など着せられたら耐えられない。エステルはビシッと言い切った。
「そうか……だが、他の生徒たちからも、投書があってね?」
 投書とは、生徒会が学園の問題解決のために設置した投書箱に寄せられた封書のことだ。
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