婚約破棄されたので辺境で新生活を満喫します。なぜか、元婚約者(王太子殿下)が追いかけてきたのですが?
 目の前のテーブルにずらっと封書が並べられた。
「これが、君に対する告発の内容だ」
 ざっと数えても、それは二十通近くある。
「一人二人であればまだしも……これだけの生徒が君に対する訴えをしてきた。となれば、生徒会長として動かないわけにはいかないだろう?」
「……中身を確認させてください」
 見せられたのは封を切られた封筒。そこから文字を内側にした二つ折りの書面が、少しだけ顔をのぞかせていた。
「それはできない。これは生徒会に宛てられたものだ。関係のない君に見せるわけにはいかない」
 その言葉は間違いではない。公平性や匿名性を保つためにも、役員でない者に投書の中身を見せたり教えたりすることはできないのだ。そういう決まりになっているし、生徒たちにもそう公表している。
「つまり君は、この由緒あるエルガス学園の風紀を乱しているんだよ? そのような人物が俺の婚約者にふさわしいと思えるか?」
 エステルは「はい」とも「いいえ」とも答えられなかった。
「悪いが、君はこの学園の生徒としてふさわしくない。エステル、君には今日でこの学園を退学してもらう。王都から離れ、自分がしでかしたことを反省しろ」
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