婚約破棄されたので辺境で新生活を満喫します。なぜか、元婚約者(王太子殿下)が追いかけてきたのですが?
「あ、はい。ギデオン様。お世話になります」
「ジェームス。ついでに、アビーを紹介してやれ」
「はい、承知しました」
 やはりジェームスの声は明るかった。
 その後、エステルはジェームスに連れられ、城内を簡単に案内された。三階がプライベートゾーンになっており、二階が執務用のスペースで、客間や謁見用の部屋もこの階にある。一階には、大広間や食堂など。そしてこれから向かう地下に、エステルの目的とする人物がいるらしい。
「地下には食料庫などもあるのですが、こちらの階段を下りると、魔導具室となっております」
 魔導具室。なんて魅力的な部屋なのだろう。
 階段を下りきったところに、木製の扉が現れた。ジェームスがノックすると「どうぞ~」と明るい声が聞こえてきた。
「アビーさんにお客様をお連れしました」
「私に?」
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