婚約破棄されたので辺境で新生活を満喫します。なぜか、元婚約者(王太子殿下)が追いかけてきたのですが?
「ま、待ってください!」
 エステルは必死に訴える。
「退学って……。これから学生魔導具開発展が開かれるんです。私は学園代表で……」
「あぁ」
 呆れたようにセドリックは答える。
「まさか自分が学園代表にふさわしいとでも思っているのか? 君の代わりなんていくらでもいるんだよ」
「えっ……」
 エステルは呼吸を忘れたかのように、放心する。
「……エステル?」
 その瞬間、セドリックの青い目が揺らめいた。しかし、彼の腕を掴んだのはジュリーで、彼女はすがるような視線をセドリックに向ける。
 もう何も見たくない。聞きたくない。
 目頭が熱く、鼻の奥がツンと痛む。
< 6 / 265 >

この作品をシェア

pagetop