婚約破棄されたので辺境で新生活を満喫します。なぜか、元婚約者(王太子殿下)が追いかけてきたのですが?
 切ない顔と言うわりには、アビーの口調は明るい。
 わざわざ隠していることでもないし、セドリックが婚約解消としたのだから、早かれ遅かれ、国中に知れ渡るだろう。下手をすれば近隣諸国まで。
「ええと……私、婚約してたんですけど……」
「さすが神様の娘さんね。そんなすごい人と結婚しようとしていた相手って誰?」
 どうやらアビーはエステルの婚約については知らないようだ。
「あっ……王太子殿下……ご存知ですよね?」
「そのくらい、知ってるよ。次の国王でしょ? って……もしかしてその人と婚約してたの? エステルは未来の王妃?」
「の予定でしたが、婚約が解消されたので……。将来は父と同じ国家魔導技師を目指そうかと」
「あ~、そういうことね。アビー様は理解しましたよ。エステルは王太子に捨てられたから、こっちに逃げてきたのね?」
 近いようで微妙に違う。父が言うには療養だ。婚約解消によって傷ついた心を癒すための療養。王都からも離れている国境近くのアドコック辺境領には、王都の情報が入りにくいからだ。それも、モートンがエステルの療養先にここを選んだ理由の一つでもあった。
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