婚約破棄されたので辺境で新生活を満喫します。なぜか、元婚約者(王太子殿下)が追いかけてきたのですが?
「見てください。これ、アビーさんと一緒に作ったんです」
 興奮しながら、何かを見せようとする彼女の姿は、雪が降って庭ではしゃぎ回る子犬のようだ。
「なんだ?」
 ギデオンは表情も口調も崩さず、静かに問いかけた。エステルが大きく手を振って示した先には、テーブルが置かれている。だが、それはギデオンが知っているテーブルとはどこか違う。テーブルの下が布で覆われていた。
「ギデオン様。ここに座ってください。足はここにいれて」
 子犬がじゃれるように声をかけてくるエステルの言葉に、胸の奥がむずがゆくなる。アビーに言われたら断りたいが、エステルから誘われれば別だ。
 ギデオンは素直に従った。椅子に座って、布の中に足を入れる。
「なっ……」
 思わず声が出た。
「どうですか? ギデオン様。足元、あたたかいですよね。冬は底冷えするという話を聞きまして、足元をあたためるような魔導具が作れないかなぁと思って。アビーさんと一緒に作ってみました」
< 56 / 265 >

この作品をシェア

pagetop