婚約破棄されたので辺境で新生活を満喫します。なぜか、元婚約者(王太子殿下)が追いかけてきたのですが?
 エステルも他の人の見よう見まねで雪かきを始めた。手にした道具で雪をすくって、ぽいっと脇に放り投げる。
 たったそれだけの動きだというのに、腕の筋肉が震え始めた気がする。
 それでも他の人と同じようにすくっては投げて、すくっては投げを繰り返し、道を作る。やっと馬小屋の前まで道がつながり、振り返ったときには、大きな通りからつながる細い一本道ができていた。
 ちょうど朝日がきらきらと降り注ぎ、積もった雪は太陽の光を浴びて輝いている。降っている雪も朝日を受け、まるで光の粒子が舞っているかのよう。
「うわぁ。きれい~」
 幻想的な朝の雪景色に、エステルも思わず感嘆の声を漏らす。力仕事をしたせいか、身体はぽかぽかとあたたまり、額にもうっすらと汗をかいているが、それを忘れるくらい、美しいものだった。
 気がつけば、道路の隣に雪だるまが並んでいた。朝から子どもたちも、雪だるま作りに励んでいたようだ。さらによく見れば、子どもたちが雪だるまを転がした跡は道になり、人が歩きやすくなっている。遊びながらも雪道をならしていたのだろう。むしろ雪だるま作りにはそういった意図もあるようだ。
「おはよう、朝から元気ね」
< 70 / 265 >

この作品をシェア

pagetop