弟のように思っていたのに、恋を教えてくれて――。
食事中だったけれど私は椅子から立ち上がり、寝室に置いてあるパソコンをリビングに持ってきた。そして座りパスタを端に寄せるとパソコンを起動させた。
見せるの緊張するな……。
私は一番最初に完結させた恋愛小説『アオハル時代の居場所はここにあった』を開いた。
「まずは、これを読んでみて。一番最初に書いた小説なの」
私はパソコンの画面を夏樹の方に向けた。
「俺が読んでいいの?」
「うん、夏樹だけ特別ね。誰にも書いてることも内容も内緒だよ」
「俺にだけ特別か……嬉しいな。分かった」
夏樹は真剣な表情でうなずいた後、画面を覗いた。
私は横で夏樹がどんな反応をするか、緊張しながら見守った。読み終わると目を閉じて眉を寄せた。無言になる夏樹。
――私へのコメント悩んでる?
改めて私は文章に目を通した。
『花畑へ行くと、手を繋いだ。気持ちがばぁってなってきて、緊張してきた。清彦さんと目を合わせるとわってなった』
「夏樹、こっちも見て?」
どっちかというと、こっちを見て欲しい。夏樹とデートを何回もしているうちに言葉が自然に頭の中で浮かぶようになってきた。だから同じシーンを書き直してみたやつ……。あの水族館デート以来、夏樹との時間が私の心を動かしている。小説の言葉も変わってきた。
『色鮮やかな花畑で私たちは手を繋いだ。彼の手は温かい。そのぬくもりを感じていると気持ちが高まり、鼓動も速くなる。夏樹に視線を向けると目が合った。胸の辺りがぎゅっとなった。彼への愛おしさが募る』
「俺のお陰で文章があれからこれになったの?」
「そうだよ。どうかな?」
「良くなったと思う……ただ……」
「ただ?」
「俺の名前が――」
夏樹が指さしたところには〝夏樹〟と名前が。私は照れ笑いしながら慌てて消した。
「間違っちゃったね、ここは清彦さんだったね」
「遥、ひとつ聞いてもいい?」
私の顔を覗き込み、真剣な眼差しの夏樹。
「これって、俺に対して思ってくれていることでもある?」
「……それは、秘密」
この状況で秘密とか、夏樹の言葉を肯定しているものだろう。
夏樹が目を細め、優しく微笑んできた。
打ち明けてしまいたい気もするけれども、言えない。
見せるの緊張するな……。
私は一番最初に完結させた恋愛小説『アオハル時代の居場所はここにあった』を開いた。
「まずは、これを読んでみて。一番最初に書いた小説なの」
私はパソコンの画面を夏樹の方に向けた。
「俺が読んでいいの?」
「うん、夏樹だけ特別ね。誰にも書いてることも内容も内緒だよ」
「俺にだけ特別か……嬉しいな。分かった」
夏樹は真剣な表情でうなずいた後、画面を覗いた。
私は横で夏樹がどんな反応をするか、緊張しながら見守った。読み終わると目を閉じて眉を寄せた。無言になる夏樹。
――私へのコメント悩んでる?
改めて私は文章に目を通した。
『花畑へ行くと、手を繋いだ。気持ちがばぁってなってきて、緊張してきた。清彦さんと目を合わせるとわってなった』
「夏樹、こっちも見て?」
どっちかというと、こっちを見て欲しい。夏樹とデートを何回もしているうちに言葉が自然に頭の中で浮かぶようになってきた。だから同じシーンを書き直してみたやつ……。あの水族館デート以来、夏樹との時間が私の心を動かしている。小説の言葉も変わってきた。
『色鮮やかな花畑で私たちは手を繋いだ。彼の手は温かい。そのぬくもりを感じていると気持ちが高まり、鼓動も速くなる。夏樹に視線を向けると目が合った。胸の辺りがぎゅっとなった。彼への愛おしさが募る』
「俺のお陰で文章があれからこれになったの?」
「そうだよ。どうかな?」
「良くなったと思う……ただ……」
「ただ?」
「俺の名前が――」
夏樹が指さしたところには〝夏樹〟と名前が。私は照れ笑いしながら慌てて消した。
「間違っちゃったね、ここは清彦さんだったね」
「遥、ひとつ聞いてもいい?」
私の顔を覗き込み、真剣な眼差しの夏樹。
「これって、俺に対して思ってくれていることでもある?」
「……それは、秘密」
この状況で秘密とか、夏樹の言葉を肯定しているものだろう。
夏樹が目を細め、優しく微笑んできた。
打ち明けてしまいたい気もするけれども、言えない。