初恋のやり直し ~過去に私をふった彼からの猛アタック~
 ◇

「お疲れ様です。お先に失礼します」
「お疲れ様です」

 ひとり、またひとりとフロアから人が減っていく。
 
 広告業界において、四月は比較的閑散期になりがちで、案件を抱えていない人たちは早く帰宅する傾向にあった。予算を消化しなければならない年度末前が一番忙しくなり、年明けから三月に繁忙のピークを迎える。
 逆に今はその頃と比較すると落ち着いているようで、白桃社も例に漏れず稼働が緩やかだ。

 その一方で、私は短納期コンペを抱えているため帰れなかった。
 ただそれ以上に、企画の中身で煮詰まっていた。

「どうしよー……」

 ほとんど人がいなくなったオフィスで伸びをしながらぽつりと呟く。
 以前は困ったらチームで案を出し合っていたし、相談できる同期も多かった。だけど、いまはひとりだ。

 それに、リサーチャーやデザイナーをアサインしていると言われても、具体的にどうコンタクトを取って推進したらいいのかがわからない。
 そもそも顔も知らない相手なのだ。こちらから会議を組み、いろんな人を勝手に巻き込んでよいのかもわからなかった。

「まず、どの案で行くのかを決めないと……。いや、まだもう少し練った方がいいかも……」

 ブツブツと独り言を言いながら、プレゼンテーション資料とにらめっこする。

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