敵国の王に囚われた皇女は、愛に溺れる
私は視線を逸らし、握った拳に力を込めた。

――何をしでかすか分からない? その通りだ。

このまま黙って後方に座しているつもりは、初めからなかった。

そしてしばらくして、戦の火蓋が再び切られた。

遠くから聞こえる金属のぶつかり合う音、兵士たちの怒号、負傷者の叫びが、薄布一枚隔てたこのテントまで響いてくる。

エドリックたちは最前線で戦っているはずだ。

私は机上の地図を睨みながら、その音を聞き続けていた。

だが、胸の奥のざわめきは次第に大きくなる。

その時、荒い息をついた一人の騎士が駆け込んできた。

「殿下! 我が軍は苦戦しています!」

「何だと⁉」

思わず立ち上がる。

「相手方の王が前線に立ち、自ら兵を率いて押してきます!」

その言葉に、血が逆流するのを感じた。

――敵の王が前線に立っている?

この場でじっとしているなど、到底できない。
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