敵国の王に囚われた皇女は、愛に溺れる
「待て! ここまでだ!」

振り返ると、エドリックの顔がすぐ近くにあった。

「陽が落ちています。これ以上は危ない!」

夕陽が地平線に沈みかけ、戦場の影が長く伸びている。

「敵の思うつぼだ!」

息を荒げたまま、私は唇を噛んだ。

確かに、闇に紛れた敵軍に誘い込まれれば、勝ちも命も失いかねない。

それでも、あの黒い鎧の男――カエルムを目の前にしながら退くのは、苦い決断だった。

そして私たちは、前線近くに陣を張った。

夕闇が迫る中、焚き火の煙と血の匂いが漂い、負傷兵の呻き声があちこちから聞こえてくる。

その緊張の中、エドリックの怒声が響いた。

「ダニエル! おまえが付いていながら、どうして皇女殿下が前線に来るんだ!」

焚き火の向こうで、副団長が言葉に詰まる。

「私が望んだことだ!」

私が割って入り、声を張り上げると、エドリックの鋭い視線が私を射抜いた。
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