敵国の王に囚われた皇女は、愛に溺れる
息を切らし、焦りの色を隠せない表情で叫ぶ。

「お逃げください! 皇太子殿下!」

「どうした!」

私が立ち上がると、彼は荒い呼吸の合間に告げた。

「敵が……すぐそこまで迫っています!」

一瞬、時間が止まったように感じた。

心臓が高鳴り、冷たい汗が背を伝う。

味方の陣が押されている――それも、この前線まで。

私はすぐに剣を手に取り、外の光の中へ踏み出した。

目の前には、刻一刻と迫る戦の現実が広がっていた。

天幕を出た瞬間、視界に飛び込んできたのは、必死の形相でこちらへ駆け戻ってくる我が兵の姿だった。

土煙と血の匂いが風に混じり、耳には怒号と悲鳴が入り交じって届く。

「逃げるな! 押し戻せ!」

私は剣を高く掲げ、声を張り上げた。

その声に気づいた兵士たちは足を止めたが、多くはなお背を向け、混乱の中を走り去っていく。
< 26 / 27 >

この作品をシェア

pagetop