敵国の王に囚われた皇女は、愛に溺れる
だが今、間近で見る彼の瞳には、職務だけではない感情がかすかに宿っている気がする。

それを確かめる間もなく、遠くで戦の太鼓が鳴り響いた。

私とエドリックが城門をくぐった瞬間、周囲の空気が張りつめた。

廊下を行き交う家臣たちは顔色を変え、私たちに一礼しながらも足早に去っていく。

「……どうした?」

胸騒ぎがして、私は足を速めた。

大広間の扉を押し開けると、玉座の前に立つ父王の厳しい表情が目に飛び込んできた。

「アレクサンドラ。」

低く響く声が、重い事態を告げる。

「西のリスクムが反旗を翻した。」

「えっ……!」

血の気が引くのを感じた。遂に恐れていたことが現実になったのだ。

リスクムは、先々代の王が征服した地。

だが重い税と中央からの圧政に、民は長く不満を募らせていた。

その怒りが、今や刃となってこちらに向けられたのだ。
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