敵国の王に囚われた皇女は、愛に溺れる
そして迷いなく、私を抱き寄せる。

「あなたが現地に着く前に、私が敵を抑え込んでおきます。」

低く落ち着いた声が耳元に響き、その温もりが胸に沁みた。

「……頼もしいな。」

そう返すと、彼の口元に僅かな笑みが浮かぶ。

互いの頬を寄せ、短くも確かな約束を交わす。

その一瞬だけ、戦の不安は遠のき、ただ信頼と誓いだけがそこにあった。

別れの合図のように、遠くで角笛が鳴り響く。

エドリックは馬に乗り直し、第一軍を率いて城門を出ていった。

その背中が見えなくなるまで、私は視線を外せなかった。

私もすぐに戦支度に取りかかった。

甲冑を身にまとい、重みを肩に感じながら革の留め具を締める。

長い髪はひとまとめにして後頭部で束ね、さらに顔を覆う仮面を装着した。

女であると悟らせぬための工夫――皇太子として、戦場に立つためには必要な仮面だ。
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