敵国の王に囚われた皇女は、愛に溺れる
「明日は私も前線に行く。」

地図を前に作戦を練っていた私がそう告げると、エドリックがすぐさま私の前に立ちふさがった。

「皇太子殿下は、ここにいてください。」

「何故だ。」

低く問い返すと、彼は一瞬だけ視線を逸らし、冷静に言葉を継いだ。

「そもそも、軍の統括者は戦場の最前線に立ちません。」

唇を噛み締める。

「……黙って見ていろと言うのか。」

「あなたに何かあれば、私の首が飛びます。」

その声はいつもの柔らかさを捨て、鋼のように硬かった。

「だが――」

反論しようとした私の言葉を、彼は真剣な眼差しで遮った。

「私を信じてください。」

その瞳には、忠誠だけではない感情が宿っていた。

私を守るために必死な彼の姿は、幼い頃から知る騎士ではなく、命を懸けて誓いを果たそうとする男の顔だった。

戦場に立つのは私の役目――そう思ってきた。

だが今は、彼の言葉が胸の奥で重く響く。
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