灯りはそのままに
あまりに方向音痴すぎて、駅の近くで私はただ困っていた。

その時、ボトルのコーラを飲んでいた青年に、

「大丈夫?何処へ行きたいの?」

さりげなく声をかけられた。

背が高く、爽やかで優しい雰囲気の人。

恐らく、同世代。

若く見える年上かもしれないが。

私は、年齢の近い男が特に苦手だったので、つい俯いた。

「そんな警戒しなくて大丈夫だよ。あ、そうだ」

そう言って、彼は学生証を見せてくれた。

「これで少しは安心した?」

そう言って笑った顔もまた優しげで。

彼も、郊外の大学に通う2年生だとわかり、その時にシュウジという名前も知った。

「遊覧船乗り場に行きたいんです⋯⋯」

小さな声で答えると、シュウジは、

「歩いてすぐだから、案内するよ」

そう言って、一緒に湖へ向かった。

「君⋯⋯えっと⋯⋯」

名前を聞きたいのかと思い、日野ですと答えた。
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