灯りはそのままに
「日野さんかぁ⋯⋯じゃあ、ピノコって呼んでいいかな?俺のことはシュウジでいいよ!」

え⋯⋯一体、何なんだろう、この人は?

呆気にとられながらも、小さくうなずいた。

私のことをあだ名で呼ぶ人なんていないから、実は満更でもなかったと言えなくもない。

「へぇ⋯⋯T女子大の1年とは才女じゃん!しかも現役かぁ。地方出身?」

「はい、そうです」

「そうなんだ。何処から来たの?あ、そんな風に敬語使わなくていいよ。同じ学校の先輩後輩じゃないんだし」

「鳥取から⋯⋯」

「鳥取?俺、実は鳥取出身の人って、初めて会ったよ」

そりゃあ、鳥取は人口少ないからね⋯⋯。

それに、地元でのことは思い出したくない、と内心思い、

「ごめんなさい、私、あまり地元のことは⋯⋯」

そう答えると、もうそれ以上、鳥取のことを聞こうとはしなかった。

気を遣わせてしまったのだろうか。
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