灯りはそのままに
「今日、このあと用事はあるの?」

「え?特にないけど⋯⋯」

「もしよかったら、あそこに見える湖畔のファミレスに寄らない?なんだか⋯⋯もう少しだけピノコと話したくて」

こんなとき、私はどう答えるべきかわからなかった。

「あ!ナンパとか、そんな下心は何もないから警戒しないで!?って言っても、警戒しちゃうよなぁ⋯⋯ごめん」

私よりも大人に見える人が⋯⋯実際、もうじきハタチになるシュウジが、やけに焦っている。

不思議なことに、この人は下心のある人には見えないと思えたので、

「うん」

たった一言返しただけで、何故かシュウジの顔は、ぱっと明るくなる。


湖畔のファミレスもまた、閑散としていた。

「ここ、眺めがいいね」

私が呟くと、

「そうだね。俺も初めて来たよ。だけど、女の子は都心の洒落た店の方が好きじゃないの?」
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