灯りはそのままに
本当に優しい人は、自分を優しいなんて言わないし、逆もまた然りだ。


夕闇が迫る頃、

「そろそろ、行こうか」

シュウジが言い、私たちは駅へ向かった。

ちょうど、目の前で電車が行ってしまったので、ホームで次の電車を待った。

シュウジは、答えたくなかったら構わないけど⋯⋯と前置きをしてから、

「ビノコは最寄り駅、何処なの?」

「高尾」

「そうなんだ?俺はめじろ台だから近いね!」

「めじろ台⋯⋯」

「あ、まだ土地勘ないか。京王線沿いで、高尾から歩けるほどの距離だよ」

どうしてそんなに嬉しそうに笑うのだろう?と思った時、シュウジは手帳のメモに、連絡先を一通り書いて渡した。

「なんだか、不思議と惹きつけられるものがあって、また会いたいと思ったんだ。だけど、それをナンパとは思われたくないから、ピノコの個人情報は敢えて聞かない。もし、気が向いたら連絡くれる?」
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